後手の優位(3)

2011年8月17日 MTG
③後手の優位が生かせる状況

結局後手の優位とはゲーム中のどこにあるか
それは先手と同じく、ゲーム序盤である。

前回の最後にも書いたがゲーム終盤では呪文の内容と
その結果として積み上げられたリソース差が重要であり
ゲーム開始時に先手だったか後手だったかはあまり関係がない。

結論としては先手が先手の優位を失った瞬間、後手は先手よりもしっかりと主導権を握れる点にある。

①について書いたときには意図的に先手の理想の動きだけに言及し、
先手の優位を失う場合については書かなかった。

先手の優位とは「先にアンタップステップとセットランドの機会が与えられる」ことである。
これを失う瞬間とは「土地を置けず」「呪文をプレイできず」ターンを返した場合である。
(後者は正確にはマナを使わないままアンタップステップを迎えてしまった場合)

片方だけならば理想とは言わないまでも先手の優位は継続している。
むしろ4,5マナ揃ったら後は呪文ばかりの方が強いパターンも多いだろう。

しかし両方を失った瞬間今度は後手が実質的に「先にアンタップステップとセットランドの機会」を得る。

分かり易い例として
リミテッドで先手が土地2枚2マナ呪文1枚、3マナ呪文2枚他2枚のハンドをキープしたとする。
しかし3ターン目までに土地が引けずターンエンド。
ターンを得た後手が「先にセットランド」の機会を得、
さらに呪文をプレイできたなら「先にアンタップステップ」を1回多く享受していることがわかると思う。

この後、先手が第4ターンにすぐ3枚目の土地を引けたとしても
既に対戦相手は3マナの呪文をプレイしている。
返ったターン、後手は一方的に呪文をプレイしてゲームの主導権をとり、
アドバンテージを積み重ねていくことができる。

こうなった後の状況は平等ではない。
「先手の優位が移ったのに後手は常に先に引き続ける」からだ。
(マリガン確率が平等として)先手よりも1枚良い条件でゲームを先導できる。
要するに「後手のほうが良く回る」のだ。



繰り返しになるが、お互いの手札がなくなってきたあたりでは
プレイする呪文の内容の方が重要になってくるので先手後手はどうでも良くなる。

ここでのゲームの主導権とはあくまでマナに制限がかかった序盤に競っているものと考えてほしい。



上の例の話に戻るが、
ここで先手を選択した場合と後手を選択した場合を比較する。

先手も第4ターンに土地を引き込めているので、正直事故という程ではない。
しかし先手を取った意味は失われてしまった。

一方後手であれば第3ターンには土地を引けるので土地に詰まることはない。
先手が詰まってくれれば主導権を握れるし、
少なくとも先手に楽にアドバンテージを取られることもなさそうだ。
これに状況が近い場合には積極的に後手を取るべきと言える。


今回先手が土地を詰まらせた第3ターンまでに
先手が引ける枚数は2枚。後手は3枚。1.5倍の差がある。
また仮に土地の割合が17枚(4割強)とするとライブラリー33枚中の土地の枚数は15枚。
5割を切る数字に対して引ける枚数2枚と3枚は期待値1を分ける境界線でもある。

(土地引く確率5割に対して試行回数2回の期待値がちょうど1
でも1枚も引けない確率は土地5割で25%, 土地4割で計算しても36%だけど)


これを踏まえると先手のマリガン条件は「土地2枚なら2マナ呪文2枚以上」だったわけだ
しかし後手は「土地2枚? 3マナまで余裕」となる。


これが最初に後手の優位がマリガン条件にあると書いた理由である。



では、以上を踏まえて
「後手を積極的に取りにいく条件とは」

悪い言い方になるが
・先手を生かせる確率が著しく小さいデッキ
・厳しいマリガン条件を全然クリアできないデッキ
を使っている場合である。

これらのデッキを使って先手を取っても
結局途中で躓いて対戦相手がスーパー先手に変身して主導権を取られる可能性が高い。
それなら先手を取らないほうが良い。


この状況は多くのシールド戦に当てはまる。
やや重めで色バランスもキツイ、回らなそうなデッキを組まざるを得ない状況である。
対戦相手もそうなっていることが多いので先手の躓きにも期待できる。


ドラフトの場合、
環境が後手を後押しすることがある。
ローウィン×3などは5マナへの到達を競うようなプールであり、後手も普通に選択肢足りえた。
また多色環境などは回ったときのカードパワーと回らないリスクの高さから
後手に人気が集まる可能性がある。

普通の環境でもカードパワー重視で固めた多色デッキを
無理やり回すために後手を取る可能性もなくはないかもしれない。(ドラフト失敗っぽいけど)



構築の場合、
回らないデッキは回るように作り変えて回すものなので後手デッキはリミテッドよりも考えにくい。
《思案》《定業》等をとることもできるし、
マリガン損を取り戻すパワーカードも使いたいだけ使える。
コントロールだろうがコンボだろうが先手を生かせない状況は普通はない。

何より先手を相手に渡すリスクがリミテッドに比べて極大。

一応、青の絡まない多色中速グッドスタッフ的なデッキとかなら
回った時のカードパワーを売りに後手デッキを名乗れるかもしれないが、弱そう。



以上のように考えられる。

注意すべきはシールドでも
・先手を生かせる確率が十分大きいデッキ
・厳しいマリガン条件もクリアできそうなデッキ
が組めた場合には先手を渡す理由はない。

個人的な感覚としてはちゃんと組めたドラフトデッキで
先手の優位でアドバンテージを築ける確率は6~7割くらい。(下手すぎ?)
3本中2本取るには十分だし、構築デッキはもう少し高い(もしくは高められる)筈。


今回呪文の内容には触れず、
マナをより多く使うことによって単純に優位に立つというモデルを用いた。
完全無駄カード・および絶望的なマナ効率のカードはリミテッドからもほぼ排除されているので実際のプレイともそこまで乖離していないと思う。



結論にもうひとつ加えるなら
・「構築後手デッキ」はいつ後手によって有利になるかを1度洗いなおし、組みなおしたほうが良い
というところだろうか。

今回は後手の優位を疑いました。

後手の優位(2)

2011年8月16日 MTG
②一般的に言われる後手の優位に対する検証

見たことがあるのは
・「後手は対戦相手より1枚多くドローできる分有利になれる」
・「後手の方がボムに先にたどり着けるので勝てる」
という表現で、それぞれ突っ込みどころがある。

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後手の優位を説明する際に

「後手は対戦相手より1枚多くドローできる分有利になれる」

と説明してしまうのは迂闊である。

「後手は先手を取った場合よりも同じターンに1枚多くドローできる」

ならば正しい。

まず対戦相手よりも多くのカードが引けていることが後手の優位の正体であるなら
後手だけがマリガンした場合、きれいさっぱりその優位は消し飛んでしまうことになる。

一方で先手の優位はマリガンしてもなくならない。(キツイけど)


プレイ感覚的にはそうとは思えない。
むしろ「ワンマリだけど、後手だし何とかなるか」とか思ってしまう。

これは対戦相手と比べて枚数がどうというよりも
「もし先手だったらマリガンスタートでキツかった」という状況と比較しての感想と思われる。

何回マリガンしても、第nターンに
自分が先手を取った場合よりは1枚多くライブラリーからカードが引けることは確かだ。




また、たとえ両者にマリガンがなかったとしても「対戦相手よりも多く」はやや怪しい。
先手にとってのアンタップステップ・セットランドと同様に「先に」の間違いだろう。

ここでベス・モーザンドの言葉に立ち返って後手の優位を考えると

「ゲーム開始時にはマナに制限がかかっており、
 終盤では呪文の枚数に制限がかかっている」

のうち、終盤の呪文の枚数に制限がかかった状態のとき、
後手が先に呪文を引くことでアドバンテージが得られるだろうか。

状況としては先手・後手はお互い呪文を使い尽くした結果、
場には十分なマナは展開されているものの場は膠着しており、
トップデッキのめくり合いとなった状態だろうか。

確かに膠着状態の打破に関しては後手の方が確率的に優位、と言えなくもない、かもしれない。

しかし現代のカードパワーではリミテッドですら膠着状態に陥ることは珍しい。

また後手がうまく先手のテンポを殺して膠着状態に持ち込んだとしても
先手で同じカードをプレイしていれば既に勝ちに繋がる大きなアドバンテージとなっていたはず。
膠着状態に強いことが積極的に後手を取る理由にはなりえない。


大体手札のカードが使い切られているような状態では
《予言》なり《グレイブディガー》なりチャンプブロックの強要なり
カードアドバンテージのやりとりは行われている。

そしてそういったチャンスを生かせるのは
むしろマナを一方的に供給されるタイミングのある先手の方である。

ゲーム終盤において、ゲーム中先にカードを引き始めた事実は
割とどうでもいいことと言わざるを得ない。


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・「後手の方がボムに先にたどり着けるので勝てる」

自分が先手を取った場合に比べて1ターン早くボムが引けるという主張のようだが
先手としてのテンポ的な優位を築けていれば1ターンのずれは大した問題ではない。

テンポ的な優位を築くことが「できない」のであれば一考の価値はあるかもしれないが
「できない」デッキが対戦相手に先手を明け渡すリスクはそれなりに大きい。


対戦相手と比べてたくさん掘りたいという意味であればやはりマリガンが許されなくなるし
そもそも《定業》1発で逆転されてしまう。

大体対戦相手とキーカードの掘り当てを競争することを考えた場合
後手を取る意味があるのはライブラリーの上から数えて同じ位置にそのカードがあった場合「だけ」だ。
1枚以上上にあった場合は先手でも先に引くことができるし
1枚以上下にあった場合後手でも先に引くことはできない。

それでも無意味とは言わないが先手の優位が勝ちに直結し得るのに対して
あまりにも小さく頼りないと言わざるをえない。

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今回をまとめると
「後手は先手を取った場合よりも同じターンに1枚多くドローできる」
「後手の方がボムに先にたどり着けるので勝てる」
に対しては
・そうかもしれないがこれらが生かせる目は先手の優位に比べて確率的に非常に小さい
・後手は終盤有利になるのかと思ったがそんなことはなかったぜ


これらの表現に対しては否定的ながら、
俺は後手の優位は存在すると考えているし、
積極的に後手を取りに行くシチュエーションもありうると考えている。


次回は俺の考える後手の優位と
③後手の優位が生かせる状況

について書く。
時々MTGの戦略記事で”後手環境”とか”後手デッキ”とかの表現を目にする。

あえて後手を取って先にドローした方が良いという意味だが


ホントかよ


と思う。

というのも旧来のMTGのルールでは先手第1ターンにもドローがあり、
それではダイスロールで勝ったほうが一方的に有利になりすぎるので
調整された結果に過ぎないからである。

確かにこれで先手、後手の単純比較はできなくなったが
それは別にダイスロールの結果が平等になったことを意味しない。

戦略記事を正しく理解せずに鵜呑みするよりも
咀嚼して身に着けたほうが応用も利くというものなので

比較的明らかな先手の優位に対して
後手の優位なるものが本当に存在するか1度検証したい。


巷の評価や常識を疑うことはMTGの割りと大きな楽しみの1つである。
これを読む人もぜひ俺の結論を疑ってもらいたい。


俺はMTGが好きすぎてこの先長々と書いてしまうので先に結論だけ書いてしまう。

・後手の優位はマリガン条件
・シールドでもカードプール次第で先手・後手を決めるべき


この先の展開としては
①先手の優位のおさらい
②一般的に言われる後手の優位に対する検証
③後手の優位が生かせる状況


長いMTGの歴史にはどんなシチュエーションにも例外が用意されている。
《宝石の洞窟》(もしくは《金属モックス》)とか《血清の粉末》とかを
組み込んだ話は割愛。
あと《Force of will》等のピッチスペルも。φマナも座ってろ!


今回は①先手の優位のおさらい

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第5版当時のMTGの入門書として発売されたべス・モーザンド著の
「マジック:ザ・ギャザリング 公式プレイングガイド」
は初心者向けとしては文章量が多すぎ、また戦略記事としては内容が基本的過ぎたことから
当時の心証はあまり良くなかったが
MTGの基本に立ち返るときには無視できない名文を残している。

「ゲーム開始時にはマナに制限がかかっており、
 終盤では呪文の枚数に制限がかかっている」

ゲーム序盤では手札の呪文を唱えきれるマナを確保することが先決であり、
手札の呪文を使い尽くした後は揃えたマナを生かす呪文の入手が優位を築いてくれる。

呪文の重さはデッキによってまちまちだが
序盤のマナの確保の重要性は《暗黒の儀式》や《Mox》等の凶悪さを見ても明らかだろう。

先攻の優位はここに帰結すると言って良い。
先攻第1ターン。先手は土地を置いて1マナの呪文をキャストできる。
そのとき後攻が使えるマナはなんと0マナ。先手側と比を取ることもできない。

先攻第2ターンでは先手は卑劣にも土地をアンタップし追加の土地をプレイ。
ゲームに送り込むマナは第1ターンと合わせて合計3マナと現在1ターンプレイしただけの後手の3倍である。

もちろんMTGのゲームデザインはこの不公平を放置したりしない。
「召喚酔い」のルールにより先攻がクリーチャーをプレイしたのと同じターン、
後攻が呪文をプレイしてからクリーチャー戦闘が行われる。

しかし召喚酔いに影響されないカードの関与によってこのバランスは崩壊する
例として先手後手両者が第2ターンに《ルーン爪の熊》をプレイした場合の先手第3ターンを考えてみよう。
先手は3枚目の土地をセットした後、一方的に3マナの呪文で場を作ってから戦闘を行うことができる。

例えば《霊気の達人》で《熊》をバウンスして攻撃。
この場合後手が返しのターンで同様に《霊気の達人》をプレイしても後手だけがダメージを受けた状態になる。

例えばブロック成立後に《歯止め》もしくは《剛力化》。(プレイすべきかはまた置いとくけど)
後手が同じカードを持っていたとしてもタップアウトしているので黙ってこれを見ているしかない。

また、ここで生じるクリーチャー数の差により、
今後先手は「除去やバウンスによってクリーチャーの攻撃を通してダメージを与えられる」のに対して
後手は「除去やバウンスでは自分のライフを守るだけ」という状況に陥る。
(もちろんこの状況は両者のデッキ及び引き次第で回復・逆転し得るが、作りやすいのは圧倒的に先手)


このように対戦相手よりもセットランドの機会とアンタップフェイズが先に巡ってくる事で
ライフおよびその他のリソースに優位を蓄積できるのが先手の優位である。


ライフが一番わかりやすいためリミテッド風の例を挙げたが、
構築でも先に土地を置けることによる優位は小さくない。

先手は対戦相手の2ターン目の2マナのカードを《マナ漏出》でカウンターできるが後手はできない。

ヴァラクート同士がお互い4ターン目に《原始のタイタン》を着地させた場合、
先にタイタンの召喚酔いの解ける先手側のほうがより簡単に勝てるだろう。

コンボデッキはルールによって引ける1枚を座って待つよりも
マナと呪文を使ってより深くライブラリーを掘りに行った方が結局早くゲームに勝てる。



こうした先手の優位で蓄積したリソース(ライフ差、クリーチャー数、キーカードを通した/カウンターした)は
その後ゲームが「カードに制限がかかっている状態」に遷移しても有効に働く。

ゲーム序盤にライフを削られ過ぎれば小型クリーチャーに除去を使わせられたり
チャンプブロックを余儀なくされる場合もある。
火力が全てマストカウンターになってしまうこともあるだろう。

クリーチャー数に大きな差がついた場合、大量除去呪文で一掃しない限り
たとえボム級の質の高いクリーチャーで逆転しようにも抑えきれないことが多い。

《飢餓と饗宴の剣》や各種プレインズウォーカーなどのカウンター可否は
その後アドバンテージを拡大し続け、勝敗を決める程の差を生む。


そもそもゲーム序盤は必ず発生するのに対してゲーム終盤にはたどり着けないことも多い。
そして手札にプレイ可能な呪文が残っている限りMTGのルールは単純に先攻が有利と言えてしまう。


まとめると
・先攻は先にアンタップフェイズとセットランド権利があるのでずるい
・ずるいまま、ゲームに勝ってしまうことも


次回はこれらの先手の優位と軸をずらした後手の優位について
一般的に言われている表現を検証していく

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